所長の大野教授と研究員の定例会のようす
人間とは、物語をつくる生き物です。思い出は、人間がつくり出す物語の代表例とも言えるでしょう。自分を主人公と置き、それを文章につづったり、友人に話したりすることによって、物語をつくっていくのです。真実でなければ意味がない、ということはまったくありません。思い出には必ず、自分の強い思いが無意識のままに隠されています。
もしもそれを意識化することができれば、それは自分が思い描く将来の物語を生み出す原動力になるはずです。
思い出は整理すれば、将来の物語をイメージする上でとても役立ちます。例えば、家族にプレゼントを贈ろうと思ったとき、あやふやな思い出しかなかったら、なにを贈れば喜んでもらえるか見当もつきませんよね。家族との思い出が整理されていれば、喜ばれるプレゼントもすぐにイメージできます。思い出と私たちの進む人生は、いつだって切れない糸でつながっているのです。
思い出は目に見える形で整理しておかなければ意味がありません。そこで大きな役割を果たすのが写真です。写真は、頭のなかで思い浮かべるのと違い、出来事を鮮明に写し出し、日記帳をつけるよりも簡単に記録できます。動画に比べるとリアリティに欠けますが、それがむしろ、物語をつくりやすくする効果があります。以上のように、タイムリーな撮影と日常的な撮影をするように心がけることは、思い出をつくる出発点になると言えます。
ところで、皆さんは悲しかったり、辛かったりした出来事を写真に撮りますか?おそらく、多くの人は楽しかった出来事を写真に撮ると思います。しかし、辛い思い出も、数年数十年後にふと振り返りたくなることがきっとあるでしょう。辛い出来事を傷が癒えたときに見ることができる機能、すなわち未来へのタイムカプセル機能があるわけです。
入院して辛かったときも、復帰した今となっては「思い出」に
思い出を写真で整理すると、これまでに撮りためてきた何気ない日常も、魔法の材料に変わります。写真を整理することで、自分を観察することができ、今まで知らずにいた自分の一貫した価値観を発見することができるのです。それは自己分析や自己キャリアを考える上で大いに役立つでしょう。例えば就職活動にも活用できます。
まだ研究の段階ではありますが、もしも写真による思い出の記録の連続が、わたしたちの人生を最高の物語に変えてくれるのなら、それはとても夢のあることではないでしょうか。
Vol. 25
撮りっぱなしで思い出写真をなくす前にできること
Vol. 24
人間関係を築くきっかけや、自分を見つめ直す機会となる
Vol. 23
年賀状の写真を決めるタイミングで、今年の写真を整理
Vol. 22
デジタル時代に変わり、撮影者の視線が多様化
Vol. 21
思い出を呼び起こす写真は、匂いや音が感じられるもの
Vol. 20
過去・現在・未来。思い出はそれぞれの時間をつなげる
Vol. 19
思い出を振り返るだけでなく、新しい思い出も加わる
Vol. 18
作り込んだ写真年賀状の効果を分析する実験
Vol. 17
フォトブックを作成して、自分の価値観を分析する実験
Vol. 16
昔の「気になる」写真で自分磨きのきっかけに
Vol. 15
「好き」「きらい」をテーマに撮って、これからの自分の課題を発見
Vol. 14
「撮っても選ばない」で、違いが出る個性
Vol. 13
思い出写真は、自分のことを相手に伝える近道
Vol. 12
いよいよ思い出を人生に活かす実験がスタート
Vol. 11
思い出は写真に。
写真を整理すれば未来が見えてくる
号外
震災のがれきから思い出を救う
Vol. 10
7 割の祖父母や親が
孫や子供の写真を持ち歩いている
vol.9
3人の2人が
ペットの写真を持っていない
vol.8
7割の人が家族旅行をしていない
vol.7
3人に2人が
家族写真を撮らなくなっている
vol.6
家族を安心させる遺影の作り方
vol.5
7割の人が人物写真の撮り忘れで
後悔 旅行中の写真撮影
vol.4
写真整理は3ヶ月に1回が6割
vol.3
デジタル画像保存の落とし穴
vol.2
カメラを片手に思い出を残そう
vol.1
思い出をつくる、のこす