思い出づくり研究所レポート

思い出をつくる、のこす記憶は「物語」があるから思い出になる

そのときは忘れたくないと思ったのに忘れてしまった、といったことは誰しも経験したことがあるでしょう。
忘れてしまうのだから必要ない、と考える人もいるかもしれませんが歳を重ねたときに振り返る思い出が少ないとさびしいものです。
では、私たちは思い出をどうつくり、どう残せばいいのでしょうか。
その方法をこの連載で10回にわけてお伝えしていく予定です。

そもそも思い出とはいったい何なのでしょうか。
思い出づくりを考える(詳細) 」をお読みいただければ、より詳しくわかりますが、思い出とは記憶や記録を手がかりに自分がつくる「物語」です。

思い出とは人の経験に基づいて生まれるものだといえます。しかし、すべての経験が思い出になるわけではありません。自分のことを振り返ってみてください。日々を過ごしている中で私たちが経験する物事は無数にあります。その経験のうち、思い出となって残っていくものと忘れ去られていくものは何が違うのでしょうか。
それは、その思い出に「物語」があるかどうかです。

たとえば、毎朝の通勤時間が思い出になることはほとんどありません。もちろん定年後や、転職後にひとくくりで「あの頃は○○駅を使っていたなぁ」という思い出になる場合もあります。しかし、ある日の通勤風景が思い出として残るためには、「その日、ある芸能人をたまたま目撃した」といったエピソードがそこになければなりません。しかも、その記憶すら思い出として定着しないこともあります。人は忘れるからです。 しかし、そのエピソードを思い起こせる何かがあれば、その思い出が忘れ去られる確率は下がります。芸能人を目撃したという思い出も、そのときにサインをもらったり、一緒に写真を撮ったりすれば、サインや写真など物理的なものを通して、そのときのエピソードを思い出すことができます。
また、他の人にその話をすることでも思い出として定着します。他人に話すことで経験した記憶が再構築され、物語になるからです。