発見がオリジナリティを高めてくれる

今月の写真人 光川十洋さん

全国7万人の会員。7万通りの写真の撮り方、写真への想いがある。写真で人生を輝かせている人をピックアップする、「今月の写真人ナンバーワン」。今回はフォトインストラクター・光川十洋さんに話をうかがい、写真を撮りはじめたきっかけや、撮影術を教えてもらった。

写真人の言葉

「写真は歌と同じ。
誰でも楽しめ、練習してコツをつかめば上達できる」


光川十洋さん

平成19年10月、台風20号が関東地域を急ぎ足で通過していた夜、光川十洋さんは「明日の朝、横浜へ撮影に出かけてみよう」と、自分のたてた予測に心躍らせていた。
翌朝、空は雲ひとつなく、どこまでも見事に晴れ渡っていた。機材を詰め込んだリュックサックを背負い、約15分間バイクを走らせて到着した大さん橋には、ひとりの男性がいるだけで、ほかに人の姿はなかった。そして見やれば、朝日に照らされて立ち並ぶビルとビルの間に、富士山が大きな雪の冠をかぶって、くっきりと姿を見せていた。

台風一過のみなとみらいから富士山を撮影。
秋台風が過ぎた翌朝、富士山に冠雪があると予測して出かけ、この時期としては珍しい富士山に遭遇した。
キヤノンEOS5D MarkⅡ、70-300㎜、F16、1/200秒、-1EV

「富士山頂は気温が低いので、台風の雨で冠雪しているはずだと思い撮影に出かけました。その予想は的中でした」
カメラが高価で、今ほど一般的に普及していなかった時代、高校の写真部に所属していた。暗室の赤い照明の下、印画紙にモノクロの映像が浮かび上がってきたときの興奮は、今も撮影意欲の源となっている。 そんな光川さんは現在、撮影の基本にしていることが3つある。ひとつは、失敗した写真を自分で検証し、その悔しさを礎にして次の撮影に活かすこと。もうひとつは、撮影方法を思いついたらどんな写真になるのか、実際に撮影して試してみること。そして最後のひとつは、写真を通して感動を発見することだ。

光芒と目の前の霧の濃さによる
朝日のきらめきを表現。
(富士山8合目)ミノルタα7、24-85㎜、F8、1/125秒、−2/3EV、ベルビア

つい先日、クラブツーリズムの撮影バスツアーの講師として山梨を訪れたとき、こんなことがあった。これまでバスの中でカメラのモニターを見ると、画面がピンクがかって見えることがあった。いつもは設定の違いだろうか、と思ってやり過ごしていたのだが、この日はたと気づいた。この現象が生じていたのは、バスの窓ガラスに施されている、淡い緑色をした日よけ用のフィルムが原因だったのだ。肉眼が勝手に光の状況に順応して、補色のピンク色のフィルター効果をもたらしていたのだ。
「私はこの経験で、カメラのモニターだけで色を判断してはいけないと学び、写真を判断する力が広がりました。写真は歌と同じ。誰でも楽しめるし、練習したり自分なりのコツをつかんだりすれば、間違いなく上達するはずです。こうした自分なりの発見も、写真のオリジナル性を高めてくれることにつながります」
名刺に書かれた肩書は、画夢配達人。光川さんは今日も、カメラを手に写真のおもしろさを誰かに伝えているに違いない。

表紙の人:喜田克歳さん

羽田から香川県へ向かう旅客機内で撮影しました。日が暮れる頃、雲海の中にはっきりとした姿で富士山があらわれました。その圧倒的な存在感をおさめたくて、窓の映り込みに注意しながら、一心不乱にシャッターを切りました。明日へのパワーが湧いてくる「霊峰」としての富士山を撮ることができました。

ニコンF6、70-200㎜、山梨県上空、2007.9、UV

『富士山を撮る ココがベストスポット276』 (日経ショナル ジオグラフィック社)より


扉の人:池田一政さん

山中湖のほとりで一晩、車中泊して撮影した一枚です。最初の目的は、朝日で赤く染まった富士山・紅富士の撮影でした。早く目が覚めてしまったため外に出ると、まだ月がでていました。目の前の湖面にちょうど白鳥が二羽いて、富士山と湖面と二羽の白鳥が入るような場所を探し、フレーミングに気をつけました。長時間露光なので、ブレないように三脚を使いました。

キヤノンEOS 5D MarkⅡ、16-35㎜、F8、34秒、山梨

県山中湖、2009.3.13、三脚使用
「365日フォトコンテスト2011秋冬」より

有終の美を飾る

有終の美を飾る

今月の写真人 中道慶一

PCC会員からたくさん寄せられる、季節の写真の数々。プロとはひと味ちがう技が光る作品をピックアップするのが「今月のいぶし銀」です。
今月は、フォトインストラクター・中道慶一さんにスポットを当て、写真を撮りはじめたきっかけや、講師としての心がけをうかがいました。

写真の原点に感謝する


中道慶一さん

私が写真をはじめたきっかけは、今から60年も前のことになります。友人からコダック社のボックス型ブローニー版のカメラを貰ったことが写真との出会いでした。はじめて撮影をして写真店で現像した写真は今も記憶に残っています。時を経て社会人となり、趣味として本格的に写真をはじめました。モノクロ写真のフィルム現像、引き伸し、暗室作業のすべてがとても懐かしく思い出されます。現在は進化の激しいデジタルカメラ全盛の時代であり、あらたな知識や技術を身につける必要がありますが、過去の体験が今でも役立つことも多く、あらためて自分の写真の原点に感謝しています。

「秋彩の庭園」

すべてを被写体にして、写真を楽しむ

現在は、PCCフォトインストラクター認定を受け、写真教室の講師をつとめています。激動のデジタルカメラ時代にもかかわらず、熟年の生徒さんのカメラ熱は高く、そして女性の受講生が増えたことも喜ばしく感じます。普段は特にテーマを意識せず、「被写体はどこにでもある」と思い、撮影しています。身近なものから旅行、風景、祭り、花、移りゆく季節の情景など何でも被写体になるでしょう。写真を撮るときは、主題となる被写体を中心にフレーミングしてから、カメラのポジション、アングル、光線の状態を見極めて構図を決定。特にスナップ写真では、シャッターチャンスを逃さないように気をつけています。
写真は楽しみながらやっていくものであり、そこから生まれる個性の表現でもあります。このことを講座を通して多くの人達と共有することを心がけています。

今後も、受講生の熱意を高め、写真を楽しんでもらえるように教えていきたいと思います。


「晩秋の景」


「錦秋の茶処」

表紙の人:松井文朗さん

北海道を旅行中に、出会ったキタキツネです。撮影した場所は、建物など人工物もあるところでしたが、偶然ひょっこりあらわれたキタキツネを逃すまいと素早くフレーミングし、人工物が写らないように調整しました。朝日の温かい斜光が、毛並や雪の形を浮かび上がらせ、厳しい冬のなかに、温もりが感じられる作品になりました。

ソニーα350、F4.5、1/400秒、北海道、2.21(8:18)

「カメラのキタムラ フォトコンテス2010秋冬」より


「北の国から」

扉の人:前田和孝さん

「感動を映す」

愛媛県の白猪の滝の氷瀑を撮影しました。場所は凍結した山道を30分ほどかけて登ったところ。凍った道は車で登ることができないため、靴にスパイクをつけ自力で登りました。一本一本が人の大きさほどもあるつららに圧倒されながら、大氷瀑の大きさを伝えるため、偶然フレームインしてきた人物を逃さずとらえました。

キヤノンEOS 5D MarkⅡ、EF24-105mm、F13、AE、愛媛県東温市、2011.1.30、三脚使用

「カメラのキタムラ フォトコンテス2010秋冬」より

 

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